兵庫医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室

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鼻副鼻腔・嗅覚外来

診察曜日 担当医
月曜日 午前 都築 建三、 齋藤 孝博
火曜日 午前 春名 威範
水曜日 午前 廣瀬 智紀
木曜日 午前 廣瀬 智紀、 齋藤 孝博

主に下記に示す鼻疾患の治療を行っております。

アレルギー性鼻炎・花粉症

右鼻腔・左鼻腔

日本人口の約50%が花粉症であるという統計もあり、国民病とも言われています。くしゃみ、透明な鼻みず、鼻づまりを代表とするアレルギー性鼻炎は、その原因(抗原、アレルゲン)によって、大きく通年性(ハウスダスト、ダニ)と季節性(花粉症)に大別されます。

診断:特徴的な症状、鼻粘膜腫脹の程度(腫れぐあい※右上写真)、アレルゲン検索する血液検査などにより、総合的に診断されます。血液検査では、特定のアレルゲンに反応をする免疫グロブリン(IgE)の濃度を調べて、どの程度反応する可能性があるか調べます。

治療方法
  • 生活上の基本事項:原因となっているアレルゲン(スギ花粉、埃など)を避けることが重要です。花粉飛散期にはマスク・ゴーグル・服装などの花粉防止策も有用です。報道機関からの花粉情報も有効に活用しましょう。ハウスダスト、ダニに反応がある場合は、湿度の強い梅雨期に繁殖し、その死骸が秋に浮遊するため、この時期に症状が増悪します。ダニは寝具に多く存在するといわれますので、掃除機による吸引除去も有用です。
  • 薬物療法:様々な薬があります。投薬方法には、内服、点鼻、貼付、注射があります。それぞれの病状、用途にあわせて薬を組み合わせます。アレルギー反応を引き起こす代表的な物質(ケミカルメディエーター)であるヒスタミンを遮断する抗ヒスタミン薬は、眠気の副作用など問題がありました(第1世代)が、最近は眠気がないか非常に少ないもの(第二世代)が主流です。重症な喘息に適応となっている高額な生物学的製剤も用いられるようになってきました。
  • 舌下免疫療法:現在はダニアレルギー性鼻炎とスギ花粉症に対する舌下免疫療法が保険適用となっています。血液検査を行い、これらのアレルゲンに反応(陽性)があれば適応になります。少ない抗原量から増やしていく投与法で、現行の治療の中で唯一の根本治療と考えられています。初回投与は医療機関で実施する必要があります。この治療は長期間を要し、3~4年間の治療の継続が必要になります。他に多種のアレルギーがある場合や他の重症のアレルギー疾患(喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど)、既往症などがある患者様には適応にならない場合があります。
  • 手術療法:薬物療法で改善しない場合は、手術療法の適応となります。通常、通年性アレルギー性鼻炎で、鼻づまりが重度の方を対象とします。花粉症に対しても行うことがありますが、その場合花粉飛散より2ヶ月前までに行うことが勧められます。実際の手術は、全身麻酔で鼻内にある最も大きな構造(下鼻甲介)の粘膜の下の組織を切除・焼灼します。下鼻甲介がアレルギー反応を起こすことで、鼻づまりがひどくなるため、この部位を減量・収縮させることが手術の目的となります。さらに、粘膜に瘢痕収縮をきたすことでアレルギー反応の抑制を期待します。ただ、とくに有効なのは鼻づまりで、鼻みず・くしゃみについては、鼻づまりほどの効果は期待できません。両鼻を分ける鼻中隔の弯曲があれば、入院で鼻中隔矯正術が必要な場合もあります。

当科で行っている日帰り手術は、Celon ENT®を用いた下鼻甲介粘膜下焼灼術です。術直後は一時的に鼻閉がありますが、術後の状態が安定すると鼻症状(特に鼻閉)は改善します。薬物療法も手術療法も、アレルギーの体質を治す治療ではないため、根本治療ではありません。このため、術後経過の中でアレルギー性鼻炎の症状が再発する可能性もあります。この場合は、再度手術を行うケースもあります。

体質改善の根本治療としては舌下免疫療法が挙げられますが、これは非常に長期(年単位)の通院治療が必要です。ですから、患者さんとよく相談の上、治療を決定します。

慢性鼻副鼻腔炎

副鼻腔の形態

鼻腔に交通する副鼻腔に炎症が3か月以上持続した状態を慢性鼻副鼻腔炎と呼びます。

症状は、膿粘性鼻汁、鼻閉、後鼻漏、顔面~頭重感・疼痛、嗅覚障害などがあります。副鼻腔は両外側に眼窩、上方に脳と隣接しているため、病変の部位によっては、眼症状(視力・視野障害、物が二重にみえる複視など)や、頭蓋内病変(脳膿瘍、髄膜炎など)を生じて重篤化するリスクがあります。

診断:初診時に、鼻内視鏡、血液検査、鼻副鼻腔CT検査、病理検査(生検)などを行い、それらの結果から診断します。近年増加してきている好酸球性副鼻腔炎は、2015年から厚生労働省の指定難病になっています。上記の検査を行い診断します。これは、成人発症した喘息、嗅覚障害、鼻茸(鼻ポリープ)などが生じます。再発しやすいため、継続した治療が必要です。

※好酸球性副鼻腔炎について詳しく知りたい方はこちらへ

薬物治療

軽度なら、抗菌薬、粘液溶解剤、抗アレルギー薬などを組み合わせた薬物治療で治ります。しかし、鼻茸の存在、薬剤による治療が有効でない場合は手術の適応となります。近年では、重症な喘息に適応となっている高額な生物学的製剤も用いられるようになってきました。

手術治療

慢性副鼻腔炎は当科の鼻科手術で最も多く手術している疾患の一つです。中央手術部で当科が行っている鼻副鼻腔疾患は年間約150~200症例と多く、そのほとんどは侵襲の少ない内視鏡下鼻内手術で行っています。

内視鏡下鼻副鼻腔手術とは、鼻腔内から全ての副鼻腔に手術操作を行う手術方法です。この手術は、鼻の入り口から硬性内視鏡を挿入し、鼻副鼻腔内を拡大されたモニターに映しながら行う手術です。鼻腔と副鼻腔との交通を十分につけて、副鼻腔内の病変(膿粘液・病的粘膜)を確実に除去・洗浄します。手術をより安全に行うために、手術を行っている部位を確認できるナビゲーションシステム下に行う症例が増えてきました。この手術のコンセプトは、正常粘膜をできるだけ温存し、術後開放された副鼻腔の粘膜の正常化を促すことです。手術のために要する入院期間は、約6〜7日間です。術後の治療も非常に重要です。特に好酸球性副鼻腔炎では、再発予防のために経過観察と治療が必要です。

手術前と手術後の変化写真。手術前は両鼻腔が鼻茸で充満し、手術後はすべて開放されている。

副鼻腔嚢胞(のう胞)

副鼻腔粘膜には、粘液を産生して表面を潤して排泄する機能があります。この排泄路が閉ざされて粘液が貯留した状態が嚢胞です。放置すると嚢胞の内圧が上がり、周囲組織を圧排して、しびれ感、疼痛、腫脹、眼症状(視力・視野障害・複視など)が生じます。嚢胞の原因には、過去の鼻手術のもの(術後性)、上顎の歯根からのもの(歯原性)、外傷性などがあります。原因不明なものもあります。

従前は、歯肉粘膜あるは眉毛部皮膚を切開して副鼻腔粘膜を完全に除去する手術が主流でした。この場合、術後の治癒の過程で、長い年月(10~30年)を経て嚢胞が形成されることがあります。治療は内視鏡下鼻副鼻腔手術による嚢胞の開放です。

鼻出血

最も頻度の高いものは、キーゼルバッハ部位と呼ばれる鼻中隔前方にある静脈叢からの出血で、止血は容易です。鼻出血の原因は、局所のみならず全身的要因もあり、多種にわたります。高血圧、抗血栓薬(アスピリン、ワーファリン、パナルジンなど)を服用している方は止血困難な場合があります。稀に、鼻腔後方からの出血(特に動脈性)の場合は、入院の上、内視鏡を用いた止血術が必要な場合があります。止血には圧迫、電気焼灼などを行います。電気焼灼の止血では、体内金属がないことを確認した上で行います。

鼻・副鼻腔に発生する腫瘍

腫瘍の確定診断には、外来で一部病変を採取(生検)して、病理診断が必要です。腫瘍の広がりをみるためには、画像検査(CT、MRI、PET-CTなど)が必要です。造影剤を注射して、病変のコントラストをつける画像診断が有用です(造影剤投前には、同意、過去のアレルギーの有無、血液検査が必要です)。

良性腫瘍では、乳頭腫が最も多く、その治療は手術で残存のないように完全に摘出することです。まず内視鏡下に鼻内から摘出を試みますが、腫瘍の広がりによっては顔面あるいは口腔側から切開(鼻外手術)が必要になります。術後も再発の有無を定期的に観察していく必要があります。悪性腫瘍では、癌、悪性リンパ腫、嗅神経芽細胞腫、悪性黒色腫などがあります。進行に応じた集学的治療(手術、放射線療法、化学療法)を適切に選択して治療します。

嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)

においが分からない(嗅覚低下、脱失)、あるいは、今までと異なるにおいに感じる(異嗅症)などの症状を嗅覚障害といいます。2025年に日本鼻科学会から発刊された「嗅覚障害診療ガイドライン(第2版:作成委員長 都築建三)」に基づいて、診断と治療がなされます。

1996〜2020年の嗅覚障害の原因疾患(n=4300) 慢性鼻副鼻腔炎が1952人(45%)と多く、次いで感冒後が1101人(約26%)。

嗅覚障害の原因は、鼻副鼻腔炎が最も多く(当科は約50%を占めます)、次いで感冒後ににおいがわからなくなる感冒後嗅覚障害、さらに外傷性嗅覚障害と続きます。近年は、新型コロナウイルス感染症による嗅覚障害も増加しています。また、原因不明であることも少なくありません。この中には、加齢性障害(退行変性)も含まれていると考えています。ヒトの嗅覚は65歳を越えると鈍くなります。また近年では、認知症、パーキンソン病など神経変性疾患に先行するものが注目されています。

障害部位によって、気導性、嗅神経性、中枢性嗅覚障害に分けられます。気導性嗅覚障害には、鼻副鼻腔疾患(鼻炎、副鼻腔炎など)により、におい刺激の分子が、においを感じる部位へ到達しないことによる嗅覚障害です。嗅神経性には、鼻炎、副鼻腔炎によるもの、ウィルス性感冒によるもの、薬剤性(抗癌剤など)によるものが主なものです。中枢性としては、頭部外傷などが多いです。

嗅覚障害の部位別分類

嗅覚検査や画像検査(CT、MRIなど)を行って嗅覚障害の程度と原因を調べます。嗅覚検査には、5種のにおいを実際に嗅いでもらう基準嗅力検査、ビタミンB製剤(アリナミン注射液)を静脈注射してにおいの有無を検討する静脈性嗅覚検査という検査があります。

治療は原因疾患の治療になります。薬物治療は、医療用漢方製剤、ビタミンB12製剤などの内服があります。副腎皮質ステロイドによる局所点鼻あるいは内服は、鼻内に炎症があれば有用ですが、炎症がなければ推奨されません。いずれの場合も、嗅覚障害の治療は長期の経過を要するため、根気強く通院していただく必要があります。慢性副鼻腔炎・鼻中隔彎曲症などが原因の場合は、上記の手術治療を行います。近年で欧米で嗅覚刺激療法の効果が報告され、日本もスタンダードな治療法として開発中です。

嗅覚障害と味覚障害の関連について

「最近、食べ物の味が分かりにくい」と感じたことはありませんか?
その原因のひとつに「嗅覚障害」が関係していることがあります。
味覚には、舌で感じる「甘い」「しょっぱい」などの基本的な味に加えて、においによって感じる「風味」が大きく関わっています。たとえば、カレーやラーメンの「香り」も、味を感じるうえでとても大切な要素です。
そのため、風邪や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などで嗅覚が低下すると、同時に「味がしない」と感じることもあります。これは、実際には味覚が落ちているわけではなく、「におい」が感じられないことで、食べ物のおいしさがわからなくなっている状態です。
もし、においや味に違和感を感じることがあれば、我慢せずに早めにご相談ください。原因に応じた治療を行うことで、改善が期待できることもあります。

※味覚障害について詳しくはこちらへ

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