兵庫医科大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室

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耳外来

診察曜日 担当医
月曜日 午前診察 阪上 雅史、美内 慎也、西村 理宇
木曜日 午前診察 美内 慎也
金曜日 午前診察 西村 理宇

当科では難聴、耳漏、耳痛、耳閉感、耳鳴、めまいなどの耳症状を呈するさまざまな疾患に対し、診断・治療を行います。以下に、代表的疾患について述べます。

慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎

左慢性中耳炎の鼓膜写真

鼓膜に大きな穿孔がある状態

慢性中耳炎は大人に多く、鼓膜穿孔、耳漏、伝音難聴を三主徴とする疾患で、風邪を引くと耳漏が出て、放置しておくと難聴が進行します。

真珠腫性中耳炎は中耳真珠腫とも呼ばれます。悪性腫瘍ではなく炎症性疾患ですが、慢性中耳炎に比べて炎症の程度が強く、周囲の骨を溶かしていく性質がありますので、耳漏や伝音難聴以外に、めまいや、顔面神経麻痺、感音難聴、ひどい場合には髄膜炎などの怖い合併症を引き起こす可能性があります。

  • 右先天性真珠腫の鼓膜写真

  • 右弛緩部型真珠腫

  • 左緊張部型真珠腫

矢印の部分の骨は真珠腫によって破壊された状態

両疾患とも手術が基本的な治療方法となり、鼓室形成術と言う手術を行うことになります。
①炎症を起こしている病変を清掃して、鼓膜穿孔を閉鎖し、②耳小骨連鎖を再形成して聴力改善を図る機能手術です。当科では、年齢、罹病期間、聴力、炎症の度合、合併症などを考慮し、それぞれの患者様ごとに最適な手術方法を選択しています。
また、当院では耳小骨再建の必要な患者様にはできる限り、自家軟骨よりも硬さのある人工耳小骨での再建を行っており、より良好な聴力改善を得ています。

顕微鏡下鼓室形成術の様子

当院の耳手術総数は、2017年は352例、2018年は310例、2019年は245例でした。
全国でも有数の手術件数であり、鼓膜穿孔閉鎖率、聴力改善率ともに全国トップレベルにあり、西日本各地から患者様の紹介があります。

お近くの耳鼻咽喉科の先生に「耳の顕微鏡下鼓室形成術の様子手術が必要」と言われた患者様は当科に相談して頂ければ、患者様ごとに最善の治療方法を選択させていただきます。
また近年、低侵襲手術方法として経外耳道的内視鏡下耳内手術(TEES: transcanal endoscopic ear surgery)が注目をあびています。当科においても、適応症例に対しては、2015年から内視鏡下耳科手術を導入しております。
従来から行っている耳後部切開法と比べて、傷が小さく低侵襲な手術方法となりますので、患者様の負担も軽減され入院日数も短期化しております(約4~5日)。

耳手術用内視鏡

現在、当院の倫理審査委員会で承認を受けた「真珠腫生中耳炎の術後成績の検討」の研究を行っています。過去に当科にて手術を施行した症例のデータ解析を行っており、今後のより良い治療につながる研究も同時に行っております。

耳硬化症

3つ目の耳小骨であるアブミ骨が固着する原因不明の変性疾患で、成人女性に多いと言われていますが、男性の患者様にも発症する可能性があり、難聴が徐々に進行する疾患です。欧米に多く日本人には少ないと言われてきましたが、診断技術の進歩と共に患者様の数も増えてきております。

根本的な治療にはアブミ骨手術という手術療法しかありません。これまで本邦では症例数が少なく、欧米に比べて手術成績が安定しませんでしたが、当院では2010年からCO2レーザーを導入しました。
術後のめまいがほとんどなくなり、安定した治療成績が出るようになりました。術後気骨導差10dB以内が約80~90%という世界標準の成績を得ており、年間20~30例の手術を行い、西日本各地から患者様が紹介されてきます。

耳硬化症であるにも関わらず、感音難聴や老人性難聴と言われて放置されてきた多くの患者さんをアブミ骨手術で聴力改善してきました。近医で「耳硬化症かもしれない」と言われた患者さんは、当科に是非ご相談下さい。

左アブミ骨手術の手術中写真

動きが悪くなったアブミ骨の代わりに
人工アブミ骨(テフロンピストン)を挿入している。

人工内耳

多電極人工内耳は1982年にオーストラリアで臨床応用されてから40年弱、日本では1994年に保険適応になってから25年余が経過しました。この間に日本全国で10000人以上が人工内耳埋め込み手術を受けられ、失った聴覚を取り戻す手術として定着しました。当科でも25年間に約190例の人工内耳埋め込み手術を行い、良好な成績を得ています。

現在、本邦で保険適応になっている人工内耳のメーカーは、➀コクレア社、②メドエル社、③アドバンストバイオニクス社の3社です。それぞれに異なる特徴があり、当科では患者様の病状やご希望に合わせて上記3社とも、選択できるようしております。

大人になってから聞こえを失った、あるいは補聴器を使用しても会話が困難になった方は、人工内耳を埋め込みますと、会話が可能になり、電話で話せるようになった方も多数おられます。最近では、補聴器と同様に、両耳に人工内耳を埋め込むことも始めており、方向感や雑音下での韻音聴取の成績も向上しております。

当科では、後に述べます幼児難聴外来とタイアップして、先天性重度難聴の子供さん(1000人に1人)にも安全に人工内耳を埋め込むことが可能です。言語中枢が発達していないので言葉を覚えることに時間がかかりますが、言語療法士がお母さんと一緒に根気よく練習させていただきます。

  • 人工内耳の体内に埋め込む部分

    (インプラント)

  • 人工内耳の体外装置

    (プロセッサー)

人工内耳を介した聞こえの仕組み

人工内耳埋込手術後のレントゲン画像

矢印部分に電極が挿入されている。

急性化膿性中耳炎

左急性中耳炎の鼓膜写真

鼓膜全体が発赤し、痛みを伴う

風邪で鼻水が出た後、耳痛、耳漏、発熱がみられる1~3歳の乳幼児に多く見られる中耳炎です。

昔は抗菌薬を飲めばすぐに直る疾患でしたが、近年、様々な抗菌薬耐性菌が出現し、10~20%は難治化・反復化します。それゆえ、初期治療において適切な抗菌薬の投与、重症例には躊躇せずに鼓膜切開が必要です。

当科には難治化、反復化した急性中耳炎が近医より多数紹介され、難治例の経験が豊富です。1~3歳の中耳炎で長引く場合は、一度当科にご相談下さい。鼓膜換気チューブ留置など、最適な治療法を選択いたします。

滲出性中耳炎

小学校就学前の4~6歳に多い、鼓膜の奥に液体(滲出液)が溜まる中耳炎で、通常は痛みを伴いません。難聴の程度は軽いですが、なかなか軽快しにくいことが多く、根気強く治療することが必要です。中耳と鼻をつなぐ耳管という管の通りを良くする通気療法や、中耳腔の滲出液を除く鼓膜切開または鼓膜換気チューブ留置術、鼻の通りを良くするための頻回の鼻処置をおこないます。場合によっては増悪因子を取り除くアデノイド切除術などを行うこともあります。

頭蓋骨が大きくなり、耳管機能が成熟する10歳前後には治ることが多いですが、約10%は真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎に進行する恐れがありますので、4~6歳での治療はとても重要です。また、4~6歳は言葉を覚える時期なので、その意味でも治療は重要です。

なかなか改善せずに、不安を抱えておられるお母様方はいつでもご相談下さい。それぞれの患者様の状態に応じた最適な治療法をアドバイスさせていただきます。

  • 右滲出性中耳炎の鼓膜写真

老人性難聴

誰であっても、年齢を重ねられると聞こえは悪くなります。これを老人性難聴と言います。①原因不明、②両側性、③徐々に聞こえが悪くなる、④高音が聞こえにくくなる、⑤聴力レベルに比べて言葉の聞き取りが悪くなる、⑥個人差が大きいなどの特徴があります。

まれに、聴神経腫瘍などが隠れている場合もありますので、耳レントゲン、MRIなどの精査が必要です。残念ながら根本的な治療法はありませんので、補聴器の装用を進めさせていただくこととなります。

補聴器は40~50万円する高価な物であれば、良く聞こえるということではありません。各患者様の聴力レベル、聴力型、生活環境に応じて調整すること(フィッティング)が重要です。当科では、毎週金曜午後に予約制で補聴器外来を行っておりますので、まず耳外来へ受診されることをお勧めいたします。もし、補聴器を装用しても会話困難な場合、失聴期間が長期でない場合は人工内耳の適応になる場合もありますのでご相談ください。

  • 耳あな型補聴器

  • 耳かけ型補聴器

突発性難聴

ある日突然、片側の耳が聞こえなくなる難聴です。患者さんは発症時の状況を覚えられていることが多く、場合によっては耳鳴りやめまいを伴うことがあります。原因不明の疾患で治療法は施設により若干異なりますが、当科では、安静とできるだけ早期のステロイド大量投与を行います。

聴力の予後は、回復する方が3分の1、不完全回復が3分の1、非回復が3分の1です。1週間以内に治療を始めた症例は回復率が高く、めまいを伴う例や糖尿病を合併する例は回復率が悪いとされています。

稀に鼻をかんだり、重い荷物を持ったりした後に、耳が聞こえなくなることがあります。これは、内耳の外リンパ液が中耳に漏れる「外リンパ漏」という疾患の可能性があります。その場合、早期に瘻孔閉鎖術を行うと、聴力が改善する例が多いです。

突発性難聴に罹患したら、できるだけ早くステロイドの大量投与を始めることが肝要ですので、是非ご相談ください。

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